特別展「昆虫 MANIAC」訪問レビュー|研究者の「好き」に触れる展示

大阪市立自然史博物館で開催中の特別展「昆虫 MANIAC」に行ってきました。研究者の「好き」が全開のマニアックな視点に、巨大模型や体験展示が重なり、“ムシの多様性”を頭ではなく身体で腑に落とせる体験でした。

目次

1. 研究者の「好き」が導く、マニア視点の面白さ

国立科学博物館の展覧会が好きなのは、研究者の方々が自分の「好き」を遠慮せずに語ってくださるからです。今回も、推し標本や最新の知見を入口に、面白さの“核心”へまっすぐ案内してくれます。専門的な内容でも、その背後にある問いや「ここが面白い」という熱意が伝わるので置いていかれません。解説を読むほどに「なるほど、そこが気になるのか」と視点が増えて、知識より先に好奇心が前に出てくる感覚を味わえます。

2. 家のアシダカグモから庭のアゲハまで——“身近さ”にピントが合う

マニアックな標本や解説にワクワクしつつも、会場には我が家でも見かける顔ぶれがいました。室内で遭遇率の高いアシダカグモやアダンソンハエトリ、そして庭のレモンやみかんの葉によくいるアゲハチョウの幼虫です。展示室で改めて向き合うことで、「ムシは遠い存在ではなく、日常のすぐそばにいる」という実感が戻ってきます。“珍しいムシ”と“いつものムシ”が一本の線でつながることで、日常の観察が少し楽しくなりました。

3. 「マニアック」をポジティブに——“偏り”は観察の豊かさ

この展覧会の図録の最後には、「マニアックというどこかネガティブなイメージを持つ言葉を、よりポジティブなイメージに変えることができたら」という趣旨の言葉が記されていました。たしかに“マニアック”は、しばしば“偏り”や“オタクっぽさ”の代名詞のように扱われがちです。ですが今回の展示を見て、“偏り”こそ対象に誠実であろうとする姿勢であり、細部に宿る魅力を見逃さない「観察の技術」なのだと感じました。
“好き”が深まると、世界の解像度も上がります。マニアックであることは視野を狭めるどころか、むしろ視野を広げるためのレンズなのだと実感しました。

まとめ

締めに掲げられていたメッセージ——

ムシと人のこれまでとこれからを考えていく。ムシは、人にとって、あなたにとってどんな生物なのか。最後までたどり着いたとき、改めてムシと向き合ってもらいたい。

この言葉に背中を押され、会場を出るころには、自分にとっての“ムシ”の意味をもう一度考えていました。私にとってムシは、怖い・厄介の一言では片づけられない、“となりで生きている存在”です。次に家でアシダカグモを見つけたら、庭でアゲハの幼虫に出会ったら、まずは少し近づいて観察してみようと思います。マニアックに覗き込むことは、世界を手ざわりのあるものに変えてくれる——その実感こそが今回の一番の学びでした。

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この記事を書いた人

ブログ1年目 / 20代 / 博物館/美術館/旅行/読書

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